眼の革命

発見された日本美術

2001年10月2日(火)~2001年11月18日(日)

「日本美術史」という枠組みは明治時代を通して徐々に形作られたが、その編集は、欧米列強の眼を強く意識するものであった。その結果、宮廷貴族や上級武士などの支配階級の庇護のもとに制作された、技術的に洗練された作品がその大部分を占めることとなった。しかしその後の長い年月の中で、オーソドックスな枠からはみ出す個性的な造形も、次第に美術として認知されるようになっている。縄文土器や民藝などがその代表である。そうした新たな領域の獲得には、既成の観念にとらわれぬ、新たな価値観の導入が必要であった。今日我々が享受する日本美術の豊かな表情のいくつかは、先人の“眼の革命”によって獲得されたものなのである。
この展覧会では、そのような新しい価値観の導入によって日本美術史の確立後に新たに見出された作品群を、一堂に集めてみようと考えた。序章に室町時代の「わびの革命」を前史として置き、「発見者・柳宗悦」、「岡本太郎の縄文発見」、「アカデミズムの冒険、辻惟雄の奇想の系譜」、「遅れて評価されたもの近世の宗教美術」の章を立て、「赤瀬川原平の超芸術トマソンの発見」を終章として加えた。柳宗悦が見出した民藝や円空・白隠らの江戸時代の宗教美術などは、あまりに民衆的であったが故に、アカデミックな美術史から除外されたのだろうが、当館ではこれまでそのような民衆的造形を積極的に取り上げてきた経緯があり、そのような流れを受けて立案した企画であった。
遅れて日本美術史に取り込まれた作品は、江戸時代以前を支配した完成度の高さを誇る中国的な価値観や、その後に流入したリアリズムを根幹に据えた西欧的な価値観から外れるが故に、オーソドックスな枠からはみ出したと考えることができる。その意味では、中国や西欧に負けまいと技術を尽くして産み出された作品よりも、そのような見過ごされてきた造形こそが、日本美術の独自の性格を雄弁に語るのではないだろうか。

展覧会情報

会期 2001年10月2日(火)~2001年11月18日(日)
入館料一般300円 小・中学生100円
※65歳以上の方及び障害者の方は無料
※第二、第四土曜日は小中学生無料
休館日10月9日(火)と毎週月曜日
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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価格:1,100円

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