台湾は九州ほどの大きさの島であるが、その地形はまことに複雑で、起伏に富み、三千メートル以上の山々が数多く連なっている。亜熱帯に属するにもかかわらず雪が降る所もあるというように気候、風土はきわめて変化に富んでいる為、各地域ごとに独自の文化が育まれてきている。この島に最も古くから住んでいたのが高砂族とよばれる人々である。高砂族は言語、習俗などの違いにより、タイヤル族、サイセット族、ブヌン族、ツォウ族、ルカイ族、パイワン族、プユマ族、アミ族そして紅頭嶼の島にすむヤミ族などの9種類に加え、平地居住の平埔族などに大きく分類される。本展出品の染織品はこれら10種族の女性達が日常の生活の中で織り上げた長衣、上衣、腰巻、褌、帯などを中心として構成されている。中でも、袋と装飾を兼ねた衣服であるツォウ族の胸当、珠裙といわれる貝を切ってぬい付けたタイヤル族の祭礼用衣服などは高砂族独自の衣服として注目される。更に、足飾、耳飾、帽子、入墨用具、大陸から伝えられたビーズやガラス製品などは、民俗学、考古学資料としてまことに興味深い資料となっている。
本展出品の作品はヤミ族の研究家として知られる渋谷区在住の瀬川孝吉氏が、戦前、台湾滞在中に現地で直接入手されたもので、現在では入手困難な品々となっている。高砂族の赤を基調とした大胆で斬新なデザインは、今日にも通じるものとして大きな反響を呼んだ。更に、日本文化の源流の一つとして東南アジア、太平洋地域の文化が脚光を浴びている現在、その要としての高砂族の物質文化の一端を紹介した本展の意義は大きい。
展覧会情報
会期 | 1983年6月21日(火)~1983年8月14日(日) |
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入館料 | 一般200円 小・中学生100円 |
休館日 | 毎週月曜日(ただし、第2週のみ日曜日)祝日の翌日及び年末年始(12月29日~1月3日) |
主催 渋谷区立松濤美術館
併催 特別陳列 渋谷区在住作家の作品 |
展覧会図録
完売