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松濤美術館ニューズレター <らせん階段> no.1
過去のニューズレター | 2016.03.01
館長室の窓から <1>
渋谷区立松濤美術館長 西岡康宏
ねこ・猫・ネコ 展 2014年4月5日(土)~5月18日(日)
桜が終り、花水木、藤、躑躅(つつじ)、石楠花(しゃくなげ)、牡丹、杜若、菖蒲、山吹といったさまざまな花がつぎつぎと咲き誇り、と同時に待ちに待ったゴールデンウィークもはじまって、風薫る季節になりました。
ちょうど、この時期に松濤美術館では「ねこ、猫、ネコ」と題する展覧会を開催しています。この展覧会は昨年、三十二年ぶりに行った美術館改修工事終了後の記念特別展として企画したもので、著名な画家や彫刻家たちが制作した猫を主題とする約九十点の作品を展示して、古くから人々に愛された猫の魅力を探ると共に、猫と人との営みを顧みることを主眼としたものです。
持参いただいた「ねこ割」写真でいっぱいのロビー
これと同じような内容で構成された展覧会は不思議なことに、これまで開催されていないようなので、もしかすると、これがこの種の展示に関しての初めての試みということになるかもしれません。いずれにしても、この展示は四月五日より公開していますが、たいへん嬉しいことに連日、多くの方が来館され、一点一点熱心に、そしてじっくりと観賞して下さっています。そうした姿をその背後から拝見することは、企画者側にとっては何よりのことで、まさに当事者冥利に尽きるというものです。
いまひとつ、この展覧会で、美術館として喜ばしく思っていることは、普段あまり見うけられない小中学生や家族連れ、さらには老若を問わず、カップルの方々が実に多く来館されていることです。こうした実態は、美術館が目指している本来の有様を極めて如実に示しているものであると実感しているところです。
にぎわう会場風景
ところで、松濤美術館はいま、「人々に美と知識と憩を」をスローガンに掲げて美術館運営を展開するべく活動し始めています。美術館が「美に触れて、知識を吸収し、そして憩をもつ場所」であるということを、認識して頂くために、企画内容、展示手法、教育関係、あるいは音楽や講演といったイベントなど、さまざまな方面に関して、いろいろと勉強しており、出来る限り早いうちに、その成果を出すべく努力しているところです。
館員一同そうした目標に向けて頑張っておりますので、見守っていただければと思っています。
展覧会ここだけの話 <1>
藤井達吉 花の天井画
企画展担当学芸員より
草花図(茶室天井画)1936年
碧南市藤井達吉現代美術館蔵
浦島草という名前の花を、この展覧会の調査で知りました。
藤井達吉の描いた抽象的で細く流れるような形が何だかずっと判りませんでしたが、それはこの草をモチーフにしていました。あの浦島太郎が釣り竿を垂れているところに似ているということで、この名が付いたと教えられました。なるほどなと思い、釣り糸を振っている様に見えたときは、感動さえしました。
この天井画に藤井達吉が描いた中にも、見たこともない花がかなりありました。サンカヨウ(山苛葉)、エンレイソウ(延齢草)、サクラソウ(桜草)など様々な花を題材に、大きさが40㎝ほどの板に日本画材で描かれています。もともとは藤井の後援者である、さる繊維会社の実業家の自宅に設えた茶室の天井を飾るために描かれました。
残念ながら、この茶室は取り壊されてしまいましたが、天井画だけは残されています。全部で36面ありました(展示は半分の18面です)。これがどんな配置で並んでいたかは、今となっては判りません。そっくり再現して見上げるように展示したいね、と展覧会準備中に各美術館学芸員の話が膨らみ、まだ茶室があったときに見たことのある人に尋ねましたが、写真や記録が全く残されていませんでした。
茶室という侘び寂びの精神が貴ばれる場所に藤井が描いたのは、人の手が加えられた園芸種ではなく、道ばたや山野に育つ自然のままの草木です。品川・大井にあった自邸の庭にはそんな草木が雑草のように生い茂っていました。各地を歩いていた彼ですから、そこには奥日光や軽井沢の高地から持ち帰ったものもあったかもしれません。ある時はこの天井画のように写実的に生き生きと描き、ある時は浦島草を描いたときのようにエッと驚くプリミティブな表現で意表をつくこともありました。
さて、天井画の植物を同定しようと、花に詳しい某学芸員が挑戦しました。36面のうちほとんどは判明しましたが、いくつかは謎のままです。右の花はシラネアオイ(白根葵)です。キンポウゲ科の多年草で高地の湿り気のある場所に生息していますが、いまではレッドリストにはいっていることもある貴重なものです。そして左は、残念ながら判らなかった花のひとつです。会期中にご来場者からご指摘をいただいて判明できればと願っているところです。
展覧会予告
藤井達吉の全貌 野に咲く工芸・宙を見る絵画 展
会期:2014年6月10日(火)~7月27日(日)
会期中一部展示替有
全国3会場巡回の最終会場になります。
どうぞお見逃しなく!
講演会
「藤井達吉の芸術と生涯」
木本文平(碧南市藤井達吉現代美術館館長)
参加費無料(要入館券)
会場:地下2階ホール(先着順 定員80名)
ワークショップ
7月5日(土)午後2時~5時
「空に舞うモビール作り」
講師:長谷川ジェット
担当学芸員によるギャラリートーク
6月21日(土)、6月28日(土)、7月19日(土)
各日午後2時~
参加費無料(要入館券)
イベントあります!
松濤美術館、こんなことも!あんなことも!やってます!
教育普及チームより
昨年開館以来の大規模な改修工事でお休みをいただいておりましたが、年明け早々の2014年1月18日(土)に、リニューアルオープンいたしました。建物だけでなく、イベントもリニューアルすべし!と続々と新しい試みにチャレンジしています。今日はその一つをご紹介します。
リニューアル記念特別展「ねこ・猫・ネコ」展にちなみ、GWまっただ中5月3日(土・祝)に松濤美術館開館以来初!の猫落語の会「ねこ・猫・ネコ落語」を開催いたしました。HPのみの告知だったので、お客様がどれだけ参加してくださるのか当日までドキドキでしたが、何と立ち見も出る程の満員御礼!
フレッシュな名調子!
記念すべき美術館初落語にご出演いただいたのは、慶應義塾大学の落語研究会の笑福亭明太子さん、桂道楽さん、三升屋小たつさん。(fig.1 桂道楽さん)
出囃子と共に、最初に登場したのは着物姿の明太子さん登場(芸名だけで会場内に笑声)、古美術商と猫が出てくる「猫の皿」を演じて下さいました。ご実家の愛猫自慢をしながら、茶目っ気たっぷりに骨董屋を舞台とした古典落語「金明竹(きんめいちく)」を披露してくださったのは桂道楽さん、トリの三升屋小たつさんは、落研の裏話(内緒です)を織り交ぜながら、漫画家で有名な田河水泡が制作した新作落語「猫と金魚」を披露してくださいました。
プロの方とは違うフレッシュな感性の落語で、落語に詳しくない担当者も素になって大笑い。
拍手喝采を受けたお三方。ありがとうございました!
演目を終えた後、大好評のネコ割パネルの前で記念写真をぱちり(写真は 左から、桂道楽さん、笑福亭明太子さん、三升屋小たつさん)
初めての美術館落語、お客様の笑い声やリラックスしたお顔を見て、すっかり味を占めた教育普及チームなのでした。6月10日(火)から始まる「藤井達吉の全貌 野に咲く工芸 宙を見る絵画」では、これも松濤美術館初の大人向けのワークショップ「空に舞うモビール作り」(講師:長谷川ジェット氏)を予定しています(7月5日(土)午後2時~)。その他、館内建築ツアーなど、HPでしか告知していないイベントもありますので、是非松濤美術館HPをマメにチェックしてくださいね。
松濤グルメ <その1>
美術館スタッフより
松濤美術館で展覧会を観た後、どこか近くで食事のできる場所はありませんか?というお客様の声にお応えするコーナーです。ご近所のお食事処・喫茶処をこのニューズレターで紹介していきますので、どうぞ宜しくお願いします。
第1回目は、イタリア風をとりいれたビストロ、「URURA(ウルラ)」です。場所は、東急文化村交差点のファミリーマートから2軒目、ラーメン店「風来居」の2階fig.1。松濤美術館からですと東急本店通りを道なりに下ったところにあたります。ランチ営業はなく、夜のみの時間帯になりますが、松濤美術館の閉館時間から行くのにちょうど良い感じです。早めのお時間に、電話での予約をお勧めします。
料理は、前菜、魚料理、肉料理、パスタ、デザートとアラカルトが豊富に揃っていて値段も数百円からとリーズナブルです。ご相談に応じてコース料理も出してくれますし、ワインもいろいろあるようです。店長は、オーストリアワイン大使に任命された方なので、ワイン好きの方はお話しされてみてはいかがでしょうか。
鉄鍋で焼かれたキッシュ
カウンターのほか4人掛けテーブルが7席程度と半個室があります。
人気の1皿を写真でご紹介しましょう。鉄鍋で焼いたキッシュロレーヌは、ふわふわのスフレみたいで、熱々のうちに取り分けて頂きます。
ちなみに同じく松濤にある姉妹店「キュイジーヌ エ ヴァン アルル」ではランチ&カフェ営業(14-17時、火曜日18時~、月曜日定休)もあるとのことです。
URURA は2階。入口は左の階段かエレベータで。
アルルの食堂「URURA(ウルラ)」
東京都渋谷区松濤1-29-2 松濤スクエアビル 2F
TEL:03-3770-0149 (予約可)
営業日:月-土曜日 18~23時(ラストオーダー、24時閉店) 日曜定休
※詳細はお店に直接お問い合わせください。
なお、本コラムはあくまで情報提供としてご覧ください。