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松濤美術館ニューズレター <らせん階段> 第2号! 2014年夏号 no.2
過去のニューズレター | 2016.03.01
館長室の窓から <2>
渋谷区立松濤美術館長 西岡康宏
5月18日に「ねこ・猫・ネコ」展が無事に終了し、お陰様で、大変多くの方々に来館していただき、我々スタッフ一同も喜んでおります。その後、6月10日より、日本の近代工芸の先駆者と言われる藤井達吉の「藤井達吉の全貌」展を開催しました。さまざまな技法、そしてさまざまな素材を駆使して作り上げたきわめてユニークな作品群は見る者にある種、独特の感覚を抱かせるものでした。
8月9日からは、「いま、台湾」と題した美術展を開催しているところです。さすがに台湾を代表する作家たちの作品だけあって、力作揃いの見応えのある展観となっています。いま丁度、東京国立博物館では、台湾の国立故宮博物院が所蔵する古代から清時代までの考古・工芸・絵画・書跡など中国の長い歴史を通観する展覧会が開催されていますが、この「いま、台湾」展は現代の台湾における美術活動を伺い知ることのできる機会となっています。そして、この展覧会では特別出品として、ジュディ・オング玉倩さんの版画の大作3点が展示されています。暑い中、一時クールなアートにひたってみてはいかがでしょうか。
クールな台湾アートがずらり!!
ところで、この秋には松濤美術館のリニューアル記念展第二弾として、京都の醍醐寺の展覧会を開催することにしています。この「御法(みのり)に守られし 醍醐寺」展の会期は10月7日~11月24日までの43日間となっています。醍醐寺が所蔵する尨大な作品の中から、国宝11件、重要文化財11件を含む都合44件を展示します。弘法大師の「大日経開題」や「訶梨帝母像」、「閻魔天像」など国宝の書や仏画をはじめ、戒体筥や金銅如意、独鈷杵、三鈷杵といった仏具、さらには俵屋宗達筆の「舞楽図屏風」と「扇面貼付屏風」、また「豊臣秀吉像」、そして大手鑑、金天目、仁阿弥道八作の「桜富士図茶碗」や蒔絵の角盥・楾など醍醐に伝わる宝物のいわばエッセンスを抽出した内容となっています。
なかでも、このたびの展覧会でひときわ注目されることは、昨年醍醐寺文書聖教として国宝に指定された文書7点と世界最古の絵巻として知られる国宝「過去現在絵因果経」1巻が展示されることです。ことに、「過去現在絵因果経」については、全長15m36cmの全場面が期間限定ではありますが、初めていっきに公開されることになり、見逃すことのできない機会といってよいでしょう。皆様お誘い合わせの上、是非ご鑑賞ください。お待ちしています。
国宝「過去現在絵因果経」15m36㎝を一挙大公開!!
展覧会ここだけの話 <2>
「台湾こぼれ話」
企画展担当学芸員より
羽田からならば4時間で台北につく。数年前までは、台北の国際空港は車で1時間ほど離れた桃園にあった。今は市内の松山空港に国際線が離発着でき、空港からは地下鉄があり、市の中心部までも10数分である。この原稿を書いているとき、東京国立博物館では「台北 國立故宮博物院展 神品至宝」が開催されている。とくに開催の初めには「翠玉白菜」が展示されたことで、連日数時間待ちの行列ができたと聞いている。であるならば、飛行機で台北にとんだ方がはるかに良いのではと思う次第である。安いツアーならば数万円、団体旅行ならば必ずと言ってよいほどに故宮を訪れる(もっとも台北故宮でも白菜を観るためには行列に並ばねばならないというのがこの数年の常識ではあるが)。
私の場合、公私にわたって、年に1・2回台北に行く機会に恵まれ、その度に故宮博物院を訪れ、さらに、その他の美術館・博物館を訪れるのを常としている。故宮では、年間を通して様々な特別展が開催されている。今年は、呉派四家(沈周・文徴明・仇英・唐寅)の展覧会が開かれている。
展覧会も良いのであるが、日本の美術館の多くが、喫茶や食事ができる場所を館内に併設しているように、故宮にもそうした場所がある。お勧めは二つ。リージェントホテルが出店するレストランで、それなりの値段はするものの美味しい中華を食べることが可能である。もう一つのお勧めは故宮四階の三希堂で、此処では台湾名産のウーロン茶をはじめとする中国茶と点心を楽しむことができる。
故宮で日本人旅行者を見かけるのはいつもの事であるが、他の美術館・博物館で日本人旅行者を見かけることは残念ながら殆ど無い。私の場合、常に行くのが故宮から市内に戻ってくる途中の中山北路にある台北市立美術館である。台湾では北美館の名で親しまれている。因みに台中にある国立台灣美術館は國美館、南部の高雄にある高雄市美術館は高美館と略してよばれ、いずれも台湾近代美術・現代美術の展示で知られている。地下に食堂があることはあるのであるが、あまりお勧めできる味ではない。お勧めは北美館から中山北路を市中心部に向かい、最初の信号をわたって左に曲がって少し行ったところにある丸林である。此処は台湾式の簡便な食堂である。台湾の一般の食事のとり方として、各種の惣菜が数十種ならび、そこから自分の好きな料理を適宜皿にとり精算するという方法がある(スープは無料)。ここの名物は、白飯の上に醤油などで甘辛く煮込んだ豚のひき肉をかけた魯肉飯で、各種の惣菜とともに食べて日本円で500円も払えば十分に満足できるであろう。
ほかに、必ず訪れるのが、国立歴史博物館で、ここでは、大陸から持ち帰った河南省博物館旧蔵の青銅器や中国陶磁のコレクションが常設で展示されるほかに、数種の企画展が開催されている。特にお勧めは夏の蓮の季節で、冷房の効いた4階の喫茶室で中国茶を飲みながら庭の池の蓮をみるのは、地下鉄で中正紀念堂でおりて10分くらい歩いていく身には何よりも癒されるときである。この中正紀念堂駅をおりてすぐに南門市場があり、様々な食材や果実が安く買える。
他にも、現代美術ならば長安西路にある日本統治時代の古い小学校を改修して美術館とした台北当代(現代の意味)美術館や国立台北藝大付設の関渡美術館などがある。
そして、最後にお勧めするのが台北の著名ホテル福華大飯店(ハワード・プラザ)である。このホテルのオーナーの一族の一人が台湾美術院院長の廖修平氏である。ホテル内には廖氏の作品がいたるところ(洗手間にまで)に飾られ、あたかも廖氏の個人美術館の趣がある。また、1階ロビーには台湾の著名な彫刻家朱銘の作品などもあり、2階には福華沙龍という画廊が設けられ、台湾の著名な作家から若手までの芸術家の個展やグループ展が開かれている。ホテル内の飲茶や台湾料理も美味である。
イベント便り
こんなことも!あんなことも!やってます!
教育普及チームより
◎8月8日
「いま、台湾―台灣美術院の作家たち」展のオープニングセレモニー
企画展「いま、台湾」展のレセプションが、オープン前日の8月8日に開催されました。特別内覧会に先立って行われた開会式では、西岡康宏当館館長の挨拶の後、桑原敏武渋谷区長、台北駐日経済文化代表処 沈斯淳代表、台灣美術院 廖修平院長より祝辞を賜りました。傅申氏や江明賢氏をはじめ、本展覧会に出品されている台灣美術院の作家の方々や関係者の皆さまが多数ご参列くださいました。また、特別出品にご協力くださった版画家・ジュディ・オング倩玉氏も、式典に駆けつけてくださいました。
つづく特別内覧会は、それぞれの作品を前にして、作家ご自身から解説を聞くことができるという大変貴重な機会となりました。台湾を“眼”で楽しんでいただいた後には、地下2階ホールにて、台湾銘菓のパイナップルケーキと、凍頂烏龍茶でひと休み。台湾を“味覚”でも体験していただきました。
傅申氏が当館館長室にて揮毫
本展覧会に、東日本大震災を主題にした作品を出品された書家の傅申氏が、館長室にて筆をとり、「松壽千年 濤声萬里」「松濤」と揮毫されました。
台灣美術院の皆さま
◎8月20・21日
夏休み親子美術館見学会&わーくしょっぷ
夏休みも後半、海や山にお出かけになったのか、小麦色に日焼けした元気な小学生40名が、お父さまやお母さまとともに松濤美術館にご来館くださいました。はじめて訪れる場所に、最初は緊張気味の子どもたちも、ブリッジから見下ろす噴水や見上げる青空、光の差し込む回廊とダイナミックならせん階段など、建物の空間全体を体験することで、心も身体も解放され、夏の午後を一緒に楽しく過ごすことができました。併せて、お父さまやお母さま方にも、美術館が家族で楽しい時間を過ごせる場所のひとつであることを感じとっていただけたものと思います。
第1部 展覧会「いま、台湾」展の見学
現在開催中の「いま、台湾」展を、担当学芸員の作品解説を聞きながら見学しました。環境問題をテーマに描かれたグラフィック作品に足をとめ、また、漢字の「形」の面白さに興味をもって、書の作品をじっくりと鑑賞する子どもたちの姿が、実に印象的でした。
第2部 劇団文学座の俳優のみなさんによるワークショップ
展覧会見学の後、地下2階ホールにて、文学座の俳優さん(植田真介、牧野紗也子、上川路啓志)を講師にお招きし、「演劇ワークショップ」を開催しました。はじめに、台湾の絵本作家・梁淑玲(リャン・シュウリン)作『いすになった木』を、俳優のみなさんがお芝居をつけて朗読。お話の世界に入り込んだ子どもたちの大きな笑い声と拍手で、ワークショップは幕開けとなりました。
つづく「シアターゲーム」では、“身体と言葉で表現すること”を、ゲームを通じて体験していただきました。俳優さんからお題(「噴水」「馬車」「動物」など)が出され、どのように表現するかをチームで話し合い、発表、質疑応答、そしてチーム換え…。制限時間目一杯、身体と言葉を使ってのコミュニケーションが、子どもたち同士で活発に行われていました。最後のお題「扉」では、指紋認証式の自動ドアが登場。観客としてご覧になっていたお父さまやお母さまからも、大きな拍手が起こりました。子どもたちの豊かな創造力と表現力を実感した90分でした。
『いすになった木』ラストシーン
文学座俳優のみなさん(右から、植田真介、上川路啓志、牧野紗也子)
「この動物は何?わかる人、手を挙げて!!」
(正解はキリンの親子)
「この扉は、どうしたら開くのかな?」
(指紋認証式の自動ドア)
「演劇ワークショップ」について
今年度は新しい試みとして、「演劇ワークショップ」を開催いたしました。
近年、“演劇のもつ力”に注目が集まり、コミュニケーション教育のひとつの手段として、同様のワークショップが導入されつつあります。こうした背景には、少子化や地域社会の希薄化、さらには就業構造の変化(サービス業が全体の7割)、グローバル化といった現代の子どもたちを取り巻く環境の変化があるといわれています。学校をはじめとする教育の場に求められているのは、これまで生活のなかで自然に身に付けられていたコミュニケーション能力を意識的に学ばせる取り組みです。しかもこれからは、自分とは異なる文化、価値観を持つ他者を理解しながら、自分の発想や付加価値を発信していくというより高度な能力が必要とされます。
「演劇ワークショップ」は、演劇の現場で日常的に行われているコミュニケーションの方法を、遊びながら学ぶ参加体験型のプログラムです。知識や技術の習得だけがワークショップの目的ではありません。今回実施した「演劇ワークショップ」が、参加した子どもたちやお父さま・お母さま方にとって、身体表現や言葉、コミュニケーションなどに興味を持つ、そのきっかけとなれば幸いです。
美味台湾!!
美術館スタッフより
陽光が焼き上げたスイーツ ―サニーヒルズのパイナップルケーキ―
台湾を代表する伝統的な中華菓子である鳳梨酥(台湾語: オンライソー、中国語: フォンリースー)は、日本では一般に、パイナップルケーキと呼ばれています。パイナップルの餡をクッキー生地で包んだ焼菓子で、台湾土産の定番として、一度はいただいたことがあるのではないでしょうか。パイナップルの台湾語「旺来」(オンライ)には、“運が良くなる”という意味があり、加えて直方体の形状が金塊にも似ていることから、縁起が良いお菓子とされています。台北市内だけでも数多くの有名店があり、また近年では、パイナップル以外にもマンゴーやブルーベリーなどを餡にしたもの、“甘さひかえめ”、“添加物不使用”を謳ったものなど、そのバリエーションは実に豊かです。これからご紹介するお店は、そんな流行のさなかにも、扱う商品はパイナップルケーキのみ、しかもその種類はひとつだけと、まさに究極の一品を提供しています。台湾中部の南投に本店を構え、昨年12月、南青山に5番目となる新店舗をオープンさせたSunnyHills微熱山丘(以下、サニーヒルズと表記)です。
サニーヒルズのこだわりは素材、特にパイナップルにあります。栽培地は、北回帰線が通る八掛山麓の赤土の丘陵地帯。冬には適度に乾いた東北の季節風が吹き抜け、夏には灼熱の陽光がふり注ぎます。サニーヒルズは、豊かな自然の中で育まれ、旬である夏に完熟状態で収穫される台湾パイナップルのみを使用します。甘みと風味が濃厚ゆえに、何も加える必要なく鍋で煮詰めさえすれば、大地のエネルギーをそのまま閉じ込めた天然の餡ができあがるそうです。餡を包む生地も、健康な環境で育てられた卵、日本製の小麦粉、芳醇なフランス産AOP認証の発酵バターの無添加。厳選された素材と独自の製法があるからこそ、自然のもの以外は何も加えないというモノ作りが可能になるとことがわかります。
完熟パイナップルの餡は、自然の優しい甘み。
太陽からの贈り物!!
究極のパイナップルケーキをお召し上がりになりたい方は、南青山のお店に足を運んでみてください。オリジナル布袋付きで、5個入り、10個入りセットが販売されています。白磁の茶器に注がれた高山烏龍茶とともに、パイナップルケーキのおもてなしを受けることもできます。お店を訪れた人たちの口コミで評判となり、サニーヒルズは、今ではパイナップルケーキの代表ブランドとなりました。
お店を訪れる楽しみをもうひとつ。それは、隈研吾氏の設計による伝統的な組木格子「地獄組」でつくられた建築です。道行く人々の足を止めるほどに、エネルギーがあふれ出す外観とは対照的に、細かく交差する木組みの隙間から差し込む光と、檜の香りに包まれる店内は、まさに「都会の森」。
サニーヒルズの全面的なご協力により、「いま、台湾」展にご来場のお客様に、パイナップルケーキをサービスいたします(日時・数量限定)。詳しくは「展覧会・イベント」のコーナーをごらんください。
隈研吾氏の設計による建築
誰もが足をとめる“地獄組”の外観
SunnyHills at Minami-Aoyama(微熱山丘)
東京都港区南青山3-10-20
TEL:03-3408-7778 FAX:03-3408-7779
営業時間:11:00~19:00
※詳細はお店に直接お問い合わせください。
なお、本コラムはあくまで情報提供としてご覧ください。