東京が江戸情緒を払拭しつつモダン都市へと変貌していた明治から大正・昭和の時期には、渋谷もまたおおきく様変わりした。新時代の展開にともなって、菱田春草や岸田劉生に代表される多くの俊英の美術家たちはここ渋谷に集い、後世に語り継がれるいくつもの美術史が誕生する。
大正時代の渋谷は、今日の喧噪からは想像もつかないですが、国木田独歩が『武蔵野』に描いたように都市と周縁の雑木林が混在する物語が生まれる場所でもあった。そして美術で言えば、旧来の美術から新しい意識をもった美術に変貌をとげる大きな節目となる時期である。東京の中心部に位置する
旧市街から新地域への移行という事実は、それ自体がこれからの新しい時代と美術思潮へ向けての青年たちのメッセージだったのだ。近代がもたらした都市化によるその周辺にひろがる郊外という場所の発見は、美術の質の転換という面においても大きな契機となった。
東京には「池袋モンパルナス」「落合文士村」「田端文士村」「馬込文士村」、あるいはもっと周りには浦和の画家村、市川周辺、鎌倉から湘南にかけてと幾つもの美術家や文化人が集い交流した土地がある。そうした場所にならんで渋谷をアーティスト・コロニー(芸術家村)ととらえることも可能であろう。
本展は、渋谷に住んだ美術家、あるいは渋谷を描いた画家を取り上げ、美術家たちがユートピアを夢みたアーティスト・コロニーをかつての渋谷に再発見しようとするものである。
展覧会情報
会期 | 2011年12月6日(火)~2012年1月29日(日) |
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入館料 | 一般300円 小・中学生100円
※60歳以上の方及び障がい者の方は無料 ※毎週土曜日は小中学生無料 |
休館日 | 12月12日(月)・19日(月)・26日(月)・29日(木)~1月3日(火)・10日(火)・16日(月)・23日(月) |
主催 渋谷区立松濤美術館 |
展覧会図録
完売