近年、静かなブームになっているものに、骨董と民藝がある。自分のライフスタイルを作り上げるうえで、先端的なデザインや新開発商品を選ぶだけでなく、古い物、手作りのもの、天然素材のもの、伝統的な手法にひかれる若者たちが確実に増えている。骨董と民藝は本来、別々のカテゴリーであるが、その両方に関わりながら新しい観点を提示したのが、「古道具坂田」店主の坂田和實氏である。
坂田氏は1973年に目白に古道具店を開いて以来、従来の価値基準とは全く異なった、ひなびたものの過激な「うつくしさ」を提案して反響を得、今やカリスマ的な人気を持っている。1994年には千葉県に個人美術館 as it is を開館し、展示を通して独自の美への問いかけを広く公開する活動も行って、坂田美学はファッション、インテリア、食にいたる多ジャンルで大きな影響力をもつにいたった。
本展は現在進行形で若い層を中心に影響力を拡大し続けている坂田氏の美学を紹介し、ものと人との関わり合いを考える機会として企画された。本展のサブタイトルに「old folk craft」とあるように、民藝の美学を発展させ、現代の生活や社会にふさわしい「もの」の美学を見せるのが坂田氏のもうひとつのねらいであり、本展の趣旨である。「古道具坂田」の代表的なコレクターである株式会社大和プレスの協力を得て、紀元前数千年前のものから現代のものまで、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、日本と各地からのさまざまなものを坂田氏監修のもとで展覧した。
展覧会は30代層を中心に幅広い入館者を得た。日頃は松濤美術館になじみのない方たちも多く訪れていただき、大変好評を得た。展覧会カタログはすべての図版撮影および会場撮影を写真家のホンマタカシが、デザインは有山達也が手掛け、話題になった。
展覧会情報
会期 | 2012年10月3日(火)~2012年11月25日(日) |
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入館料 | 一般300円 小・中学生100円
※60歳以上の方及び障がい者の方は無料 ※毎週土曜日は小中学生無料 |
休館日 | 毎週月曜日 |
主催 渋谷区立松濤美術館 |