現代の版画1994

1994年12月14日(水)~1995年1月29日(日)

本展は、昭和62(1987)年からはじめ3、4年おきに開催している「現代の版画」シリーズの第3回目である。「現代の版画」は今日の美術のなかで、版画をとおして発言しようとしている作家に注目し、版画というジャンルから美術の展開を見てみようとする企画である。オリジナリティをもち将来的にも新たな方向を示しうると思われる注目すべき作家を、毎回20名前後選び、新作を依頼するものである。
今回の出品作家は、飯塚二郎、出原司、井出創太郎、大島成己、太田三郎、海東忠彦、杉山晶子、鈴木頼子、曽根光子、高浜利也、西村正幸、藤木正則、増田史朗、宮井里夏、山本麻友香、横田亜弓、艾沢詳子の17名で出品総数は53点であった。
前2回について設けていた賞を今回からは取り止めた。それは展覧会の焦点を、より状況を示す方向に向けるためであり、いきおい受賞作ひとつをもって見られることを避けるためである。
17名の作品は様々な方向を指した作品群でありひとつの傾向としてまとめることは困難であるが、今回の特徴を一言で現すならば、版画らしくない版画ということがいえるかもしれない。版画家が版画だけを専門に制作するという姿勢から、さまざまなメデュームのなかのひとつとして意識する傾向が強まり、彫刻や絵画などと平行してまた交互に関係を持ちながら制作することが増えたためと見られる。そして表現形態もフレームを飛び出し、インスタレーションの方法をとるものが多かった。
しかしながら、本展が今日の版画表現の形態や概念性への柔軟さをみせる一方で、その限界をも露呈していたのは事実である。版画というジャンルがひとえに技術区分で捉えられることを前提としているならば、「版」であることの積極的な意味を見いだせない今日の、「(絵)画」であることの不可欠な意味を追究することこそ作品生成に重要であろうと思われたのである。

展覧会情報

会期 1994年12月14日(水)~1995年1月29日(日)
入館料一般200円 小・中学生100円
休館日12月19日(月)・26日(月)・27日(火)・29日(木)~1月3日(火)・8日(日)・9日(月)・16日(月)・17日(火)・23日(月)
主催 渋谷区立松濤美術館
展覧会図録

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価格:2,000円

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